Friday, August 24, 2012

佐藤賢一著「ジロンド派の興亡」を読んで




照る日曇る日第534

長らく中断していた佐藤賢一氏の「小説フランス革命」シリーズがいよいよ第2部に入り、その再開第一弾の第7巻が数年振りに刊行されたのは誠に慶賀に堪えない。

この巻では革命第4年に入った1792年のジロンド派とルイ16世の角逐を主にロラン夫人の視点から描いているが、内務大臣に就任することになった夫よりもはるかに凄腕のこのサロンの女主人の容貌、人柄、政治的経綸が、繰るページの奥からぞめき立ってくるような描写に舌を巻かされる。

とりわけロラン夫人が、夫やダントンを唆して市民の蜂起を実現するものの、ルイ16世が、アホ馬鹿ロバの王様どころか、抜群の知性と忍耐力で、チエルリー王宮に侵入したパリの貧民、サンキュロットの暴徒たちを鮮やかに撃退する光景は生彩がある。

かつては革命の寵児としてパリに令名をとどろかせたデムーランが、愛児の誕生を目前にして再度の蜂起に尻ごみするくだりや、「両大陸の英雄」ラ・ファイエットの哀れな悪あがき、王からつかまされた黄金で再び暴動を企もうとする不屈の反逆者ダントン、暗殺の恐怖にちぢみあがる小心者のロベスピエールなど、フランス革命を担う群像たちを、著者はこれまでのどの巻よりも見事に活写してやまないのである。


革命の原点は食料暴騰人心不安いずれその日も遠くあるまじ 蝶人


*全国の学友諸君、この演説を聴け!


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