Saturday, August 18, 2012

磯崎新著「気になるガウディ」を読んで




照る日曇る日第532回&勝手に建築観光50 

「眼高手低」とは私が磯崎新につけたキャッチフレーズ。建築にかんする蘊蓄を語らせたらこの人の右に出る者はいないが、実際に作っている作品が口ほどにもないのがこの本の著者である。

しかし、ガウディ建築は不合理にあらず。それを基底で支えたのは「カタルーニャ・ヴォールト」という薄肉レンガ工法で、これによって建築家は型枠不要で限りなく平面に近い曲面を自由自在に造形することができた、

などと説かれると、さすが磯崎と膝を打ちたくなるし、もはや故人の意図とはかけ離れたところで観光目的で突貫工事が進んでいるサグラダ・ファミリア聖堂はそのまま未完成で放置せよという所説にも説得力がある。

著者によればガウディの最高傑作は1904年から6年にかけて建てられた「溶けてゆく家、カサ・バトリョ」だそうで、本書に添えられた写真を見ると屋外ではぬらりとした鱗のような屋根瓦の上をドラゴンの背骨が蛇行し、室内では柔らかなマシュマロのような質感の天井や壁が琴瑟相和して優しいハーモニーを奏でている。

ふーむ、するてーとこのカサ・バトリョの「溶けゆく家」というコンセプトを密輸入したジャン・ヌーヴェルが、あの下らない汐留の電通本社ビルをおっ立てたわけか。恐らくヌーヴェルはいわく言い難い後ろ暗い所業に手を染めているに違いないこのメガエージェンシー全貌を、外部からは簡単に見分けられないようにしようと企んだのである。


東電のコンクリートの電柱で朝も早よからミンミン鳴くなり 蝶人


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