Tuesday, August 07, 2012

荻上直子監督の「かもめ食堂」を見て




闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.290

フィンランドで撮影した日本映画なんて初めてではなかろうか。

監督が連れて行くのは小林聡美がたった一人で立ち上げた日本食堂。はじめのうちは全然お客がつかない。やって来るのは日本語をしゃべるアニメファンの若者だけ。

彼に「ガッチャマン」の主題歌を教えてくれと頼まれたところから物語は動きだし、片桐はいりやもたいまさこや夫に失踪されたフィンランド女性や以前ここでカフェを経営していた男などいずれも一癖ありそうな奇妙な人物ばかりが次々にやって来る。

ここは吹き溜まりでありアジールでもあるのだ。しかし地道な努力がみのってついに全席満員となる。

孤独なこころにじんとしみるユーモアとウイットがフィルムの奥底にゆっくり流れている味のある傑作である。どこかアキ・カウリスマキの世界に似ているなあ。


由比ヶ浜の沖合遥か抜き手切りオシッコしてから浜に戻れり 蝶人

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