Friday, August 10, 2012

マーク・トウェイン著「トム・ソーヤーの冒険」を読んで




照る日曇る日第528


夏だ、休みだ、お子様ランチだ! ということで、柴田元幸氏の翻訳による文庫本を手にとってみましたが、これって全然子供が読む本ではないですね。

確かに悪戯者のトムが悪友どもをたぶらかしてペンキを塗らせたり、可愛いベッキーちゃんに恋したり、親友のハックたちと一緒に夜の墓場で殺人事件を目撃したり、家でして船に乗って野宿したり、島の洞窟でベッキーちゃんと一緒に行方不明になったり、殺人鬼インジャン・ジョーと遭遇したり、隠された埋蔵金を見つけたりいろいろするんだけれど、それはすでに青雲の志を懐いて世の中に出たもののやっさもっさするうちにくたびれ果てて消耗しこりゃあいったいなんのために生まれてきたんだべえ、なぞとほぞをかむ大の大人たちがおのが若き日々をゆくりなくも思い出し、心ゆくまで悔いんがための本なのである。

この少年童話の姿を借りた恐るべき予言の書は、しょせん人間、いや男には3つのタイプしかないと断言しているようだ。

生まれてはみたものの面白くもおかしくも無い生涯を全うするシド派、そこそこ冒険したあとで貯めたお金を元手に恋も事業も堅実に成功させてゆくトム派、そして大冒険の夢がついに実現し、一夜にして大富豪となったが自分の取り分なんか要らないから、元の乞食のような自由で奔放な浮浪生活に戻りたいと叫ぶハック派……。

 さて自分はどっちだったろうと考えながら、由比ヶ浜の波間に浮かぶわたくしだった。


昔から自分勝手な奴だったチャンスには滅法弱い鈴木一郎 蝶人


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