Saturday, August 04, 2012

トニー・スコット監督の「エネミー・オブ・アメリカ」を見て




闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.288

至る所に監視カメラや盗聴マイクが仕掛けられ、権力を握る者たちが市民のプライバシーを完膚なきまでにぶち破っている状況を告発する映画である。

主に英国に倣ってわが国の店舗や街頭のあちこちでこういう不愉快な光学装置が断りも無く据え付けられたのは確か90年代頃からだったと記憶しているが、それが今世紀に入るや雨後のタケノコのごとく繁殖するにいたった。

それまでよく通っていた新宿のタワーレコードに行くのを止めたのは、このビルのエレベーターの内部に据え付けられた監視カメラが俺をにらんでいるのを発見したからで、激昂したおいらはジャンプ一番そいつをもぎ取ろうとしたんだが届かなかった。1998年製作の凡庸なこのハリウッド映画は、そういうことを各人が各国でせよと教えている。

にも拘わらずわが国の多くの人々は、捜査のためにはおのれの肖像権やプライバシーなぞ屁とも思っていないようで、こないだのオウムの犯人逮捕劇のときにも誰ひとり異議を唱えず、最近とみに捜査能力が減退していた警察の久しぶりのお手柄なぞと拍手喝采してよだれを流して喜んでいた。この阿呆たれめが。

彼奴等はオウムの10匹や100匹よりも大事なものがあることをすっかり忘れて、裸の王様どころか街中でフリチンになって喜んでいるのである。ワンワン。

映画のことにも少し触れておくと、懐かしやだいぶ年をくったジン・ハックマンが、危機に陥った主人公を側面援助する元情報局員の役で健在ぶりを示している。あとジェイソン・ロバーズもちょいと姿を見せている。すぐに消されてしまうんだが。


誰ひとり読まぬブログを書き続ける人の心の底知れぬ闇 蝶人

    *この歌、本日の「日経歌壇」にて岡井隆氏に選ばる。あな恐ろし。


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