Monday, August 27, 2012

「ディーリアス生誕150周年エデション18枚組CD」を聴いて




音楽千夜一夜 277

このEMIの18枚組セットに収められたディーリアスの「夏の歌」を聴いて思い出すのは、1969年か70年の初秋にNHKで放送されたケン・ラッセル監督・BBC製作の同名のドラマである。

視力を失い全身がマヒして創作活動に支障をきたしたディーリアスの助手として自宅に住みこんだ弟子フェンビーの愛と葛藤を描くこのセミ・ドキュメンタリードラマは、私に終生忘れ難い感銘をもたらしてくれた。
 
愛弟子の奮闘空しく偉大な英国の作曲家はとうとう亡くなり、フェンビーは遺されたディーリアスの妻と2人で在りし日の思い出に浸っている。やがて応接間のテレビで彼の追悼番組がはじまると、冒頭に流れてくるのがこの「夏の歌」。その場によよと泣き崩れる妻の後ろ姿からキャメラは静かに遠ざかり、それがそのままこの叙情的なドラマの鮮やかなエンデイングになるのだった。

 そのときの演奏がフェンビー自身の手になるものだったかどうかはもう憶えていないが、ここで聴けるバルビローリ指揮ロンドン交響楽団の演奏も見事なものである。

 思い出は遥かに遠くディーリアスの「夏の歌」聴きし千歳烏山の朝 蝶人

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