闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.287
「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」という素晴らしいタイトルのこの映画を製作、演出、脚色したのは他ならぬスタンリー・キューブリックであるが、この米ソ核戦争SFの主要な3役に怪優ピーター・セラーズを起用したことでまことに迫真的な傑作が出来上がった。
反共反ソの気狂い将軍(スターリング・ヘイドン)が突如30のB52爆撃機に対してソ連領内のミサイル基地の先制攻撃を命じ、やっさもっさいろいろなやり取りがあった挙句にノーコントロールに陥った1機だけが核弾頭を投下してしまい、ソ連の対抗最終兵器によって世界は崩壊してしまうというお話だが、そのやっさもっさの途中でジョージ・スコットのやはり反共愛国将軍が大統領にソ連抹殺を唆したり、もっと得体の知れないヒトラー礼賛のストレンジラブ博士が狂気に満ち満ちた演説をぶったり、ソ連領内に突入中の爆撃機内部のてんやわんやの悲喜劇を演じたりして見る者を圧倒し、こういう非常事態は米ソだけでなくこれからも世界の至る所で繰り返されるだろうことをはっきりと示している。
ラストの核爆発の映像と共に流れる「いつか晴れた日にまたどこか会いましょう」という美しい歌が、哀しくも恐ろしい。
関内で人死にありという血ぬられし線路を全速で過ぎたり 蝶人
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