茫洋物見遊山記第81回&鎌倉ちょっと不思議な物語第260回 &ふぁっちょん幻論第69回
年年歳歳花相似 年年歳歳人不同。あれからもう1年が経ったのですね。
私は今年もまた、春近い朝、鶴岡八幡宮の片隅にある国宝館のひな人形を見物に行きました。享保時代に製作された大きなうりざね顔、引目鉤鼻の享保雛をはじめ、江戸、明治、大正時代につくられ大家、名家、旧家に大切に保存されていた内裏雛や御殿飾り、雛段飾り、立雛、衣装人形、御所人形などが目も綾に陳列され、この一隅だけは早くも春爛漫の雰囲気です。
昨年も触れましたが、平安時代以降本邦では(右大臣より左大臣のほうが偉かったように)、身分地位が上位の者は左側(向かって右)に立つという伝統と風習があったために、この会場の人形はいずれも男雛が左(向かって右)に、女雛が左(向かって右)側に並んで立っています。
ところが昭和三年一九二八年、昭和天皇即位の折にそれが左右逆転したのはいかなる事情があったのでしょうか。恐らくは西洋から来日した貴賓との会見や接待の折に不都合が生じる惧れがあったために古来伝統の作法を急遽曲げてしまったのでしょうが、どうしてこういう問題に過剰反応する右翼や国家主義者たちが反対しなかったのか不可解です。ここでは礼儀作法という名目に潜む西洋と神国ニッポンの存在理由が問われていたのですから。
それにしても昭和天皇の顰に右に倣って、それ以降の人形業界や日本人が西洋流のレイアウトに盲従してしまったことこそ大問題だと思うのですが、そうゆー下らない話よりも今年のパリコレで話題を呼んだコムデギャルソンの少女風のワンンピースの発想の原点は、縄文巻頭衣ではなく「お雛様」にあるとにらんでいるのですが。
*本展は鎌倉国宝館で4月1日までひめやかに開催中
平成のすべての女性をお雛様にする川久保玲 蝶人
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