Monday, March 05, 2012

北杜夫著「巴里茫々」を読んで

照る日曇る日第500回


どくとるマンボウ氏の落ち穂拾い2作です。

「巴里茫々」では著者が夢の中で仏蘭西語など全然知らないのに、仏蘭西の国歌「ラ・マルセイエーズ」を歌ったというくだりが出てきます。それはそれで面白いのだが、改めてこの歌詞を読んでみると物凄い内容であります。

♪圧政者どもよ、身震いするがいい! お前ら裏切り者共もだ。
あらゆる陣営の恥さらし! 恐れるがいい! お前らの反逆計画は最後には報いを受けるのだ!

そして、
♪この残虐な奴らは皆、情け容赦なく、自分の母親の胸を引き裂くのだ!

と来るのですからね。

著者はそのあまりにも軍国主義的で勇壮という野蛮な内容に辟易してとうとう歌うのをやめてしまうと、隣にいた仏蘭西人から「このジャップの小鼠め!」と罵られます。

されど本邦でもそのうち「君が代」を歌わないでいると、同じように泣く子も黙る大阪の禿童市長から「この非国民め!」と罵られたうえに、全員牢屋に入れられるようになるでしょう。桑原桑原。

もうひとつの「カラコルムふたたび」は名作「白きたおやかな峰」に出てきたヒマラヤの村を再訪し、懐かしい案内人と再会するほろ苦い話です。


ギョエテは詩は機会詩だというが機会がないので詩が生まれないよ 蝶人

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