♪音楽千夜一夜 第254回
2011年12月7日、世界の一流オケとオペラハウスを渡り歩いた舞酢吐露馬連母威武がついにミラノのスカラ座を射止め、このモーツアルトがそのお披露目となりました。なんせ大統領と首相臨席のスカラ座でイタリア国歌を振るのだから物々しい。
バレンボイムの指揮は三〇年前に巴里のシャンゼリゼ劇場でパリの管弦楽団とやったときとまったく同じぎくしゃくして不自然でとってつけたような劇伴ですが、ドンナ・アンナにアンナ・ネトレプコ、ドンナ・エルヴィーラにバルバラ・フリットリという配役が凄いので、いやがうえにも期待が盛り上がります。
才人ロバート・カーセンの演出はこの二人の裸や下着姿、とりわけ乳房の谷間をこれでもかこれでもか見せつけようとするもので、個人的にはなかなか楽しめましたが、冒頭ドン・ジョヴァンニに強姦されているはずのドンナ・アンナが快感に悶えているという演出はいくらなんでも行きすぎではないでしょうか。その忘れられない男の顔をようやく思い出すのが2幕になってからとは、なんぼなんでも遅すぎるでは。
それにしてもあれほど純情可憐だったアンナ・ネトレプコがころころ無様に肥ったこと。まるで人類ではなく子豚のような顔つきでモーツアルトのアリアをヴェルディ風に激唱する姿には驚かされました。この人に歌唱指導者はいないのでしょうかね。カラヤンなら首にしますよ。
それでも全盛期を過ぎて高音がまるで出ないバルバラ・フリットリよりははるかにましな演奏でしたが、表題役のペーター・マッテイも終始衛生無害のボンボンにしか見えず、辛うじて鑑賞に耐えたのはウエールズの快男児ブリン・ターフェルひとりという体たらく。こんなおそまつなプルミエにやんやの拍手喝采を呉れているスカラ座の観衆が阿呆に見えてしかたのないハイビジョン映像でした。
いやあモーツアルトのオペラって難しいですねえ。
配役 ドン・ジョヴァンニ:ペーター・マッテイ、ドンナ・エルヴィーラ:バルバラ・フリットリ、ドンナ・アンナ:アンナ・ネトレプコ、ドン・オッターヴィオ:ジュゼッペ・フィリアノーティ、レポレロ:ブリン・ターフェル、ツェルリーナ:アンナ・プロハスカ
マゼット:ステファン・コツァン、騎士長:クワンチュル・ユン
交合をかくにんした人とパンダの恥ずかしさ 蝶人
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