Thursday, March 01, 2012

マルセル・カミュ監督の「黒いオルフェ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.209


1959年にギリシャ神話の「オルフェオとエウリディーチエ」にヒントを得て製作されたブラジル版の愛の物語である。

ギリシャ神話でエウリディーチエが毒蛇に咬まれて落命したように、この映画でも薄命の美女が謎の死を遂げ、オルフェオが黄泉の国に行ってしまった愛妻を探してその名を虚しく呼ばわる挿話も引用されている。
しかしこの映画の最大の魅力は、リオのカーニバルの真っただ中に舞台を設定したことで、それによって遠い遥かな神話のなかのロマンが、第3世界の現実のなかで生々しく蘇り見事に血肉化されることになった。はかなくみまかった恋人たちの後を継ごうとする少年少女の朝のサンバで全篇の幕が閉じるのも粋なはからいである。

ただひとつ私の苦手なカルロス・ジョビンのボサノヴァが、終始ギターの弦で掻き鳴らされるのには閉口しました。


降る雪やそぞろ平成も遠き朝 蝶人

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