♪音楽千夜一夜 第251回
まだこの指揮者が元気だった05年6月13、17日のライヴ演奏です。舞台を現在のアミアン、パリ、ルアーブル、ニューオリンズに移し、モデルやカメラマン、ウインドウディスプレーなどのファッション性を大胆に取り入れた才人ロバート・カーセンの演出はなかなか面白いのですが、最後のルイジアナの無人の荒野でヒロインが息絶える第4幕が華やかな第1幕と同じ空間構成になっているのはちと解せない。
小澤の指揮はやはりオペラの本質に無知な人らしく例に因って神経質な交響的劇伴で、原曲の叙情と浪漫をいたずらに妨げているが、かといってそのダメージは致命的なところまでには至らず、それなりにプッチーニの音楽を護持してなんとかかんとか終盤までなだれ込んでいるが、問題は表題役のバーバラ・ハーヴェマンだ。
貧乏学生デ・グリューを操る魔性の女、のはずなのに、そういう容貌には程遠い謹厳実直なキャラクターを晒し続けるものだから、せっかくニール・シコフが熱演しているのに、ラストの野垂れ死に至っても全然悲しくない。勝手に死ね、という風に思えてしまうのだ。誰が決めた配役かしらないが完全なミスキャストだった。
ちなみに終幕では後の「ラ・ボエーム」「トスカ」の愁嘆場に似たアリアが登場するのが興味深い。プッチーニの手持ちのレシピはそれほど数多いものではなかったので、色々なオペラで同じようなメロディを器用に使い回していたことが分かりますね。
プッチーニのオペラ・パレットにはあんまりたくさんの絵の具が使われていない 蝶人
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