Tuesday, March 20, 2012

県立近代美術館鎌倉で「藤牧義夫回顧展」を見る

茫洋物見遊山記第80回&鎌倉ちょっと不思議な物語第259回


1935年9月、新進芸術家として各方面からの期待を集めていた弱冠24歳の藤牧義夫が失踪してから76年が経過した今、神奈川県立近代美術館でモダン都市の光と影と題する生誕100周年の回顧展が開催されています。

 群馬県館林に生まれた藤牧は少年期から絵の才能を発揮し、16歳で上京してから主に隅田川流域周辺に住んで独学で習得した木版画の制作にいそしみました。

彼が素描や木版に刻んだビルや街路や橋や河は、他の誰にも似ない大胆なフォルムとコントラスト、そして繊細でモダンな造形感覚で震災後に復興した30年代の都市東京の光と影をあざやかに凝縮しています。

会場には彼の個性的な版画と共に最長16メートルにも及ぶ隅田川流域を短時間でスケッチした「白描絵巻」が出店されていましたが、これを歩行者の速度でゆっくりと流れる巨大スクリーンで眺めていると、その余りにも生き生きとした即興的な筆致に接して、在りし日の作家の眼差しが蘇ってくるような錯覚にとらわれました。

夭折か、はたまた永久行方不明か? 謎の芸術家の足跡は、いまなお激しく追慕されています。

*同展は来る3月25日まで寂しく開催中。


君は何故9月2日に消えたのか隅田川絵巻にその謎を探す 蝶人

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