Friday, March 09, 2012

バレンボイム指揮スカラ座「ラインの黄金」を見て

♪音楽千夜一夜 第246回

ロンドンやパリで振っていた頃はピアニスト上がりの新進気鋭のごんたくれ指揮者だったのに、あれよあれよという間にシカゴ響、ベルリン国立響、ウエスト・イースタン・ディヴァン管を手中に収めたと思ったら最近はミラノ座で押しも押されぬシェフとなり年齢を感じさせない大車輪の活躍を続行しているバレンボイムのワーグナーである。

全曲を視聴し終えての感想は彼の緩急自在の劇伴であり特に劇的なクライマックスづくりのうまさであるが、それをブルックナーでは失敗してもワーグナーの長丁場で巧みに繰り出していくのだからやはり並の指揮者ではない。

しかしワーグナーの指輪の前夜祭にあたる本曲では、冒頭の星雲状態の暗騒音の神秘感が命なのに、この序奏はあまりにも無機的かつ音符直訳態であり、いくら後半追い上げても遅すぎる。私淑するフルトベングラーのそれをもう一度謙虚に聴き直して、一から出直してもらいたいものだ。ルネ・パーペの演奏、ギー・カシアスの演出もいまひとつ精彩を欠く。

出演 ルネ・パーペ, ヤン・ブッフヴァルト, マルコ・イェンチュ, シュテファン・リューガマー, ヨハネス・マルティン・クレンツレ等(2010年5月26日収録)

ロンドン、パリ、ベルリン、シカゴ、ミラノ世界の名門を制覇したブエノスアイレス生まれのユダヤ人マエストロ 蝶人

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