Wednesday, March 28, 2012

チューリッヒ歌劇場の「ファルスタッフ」と「道化師」を見て

♪音楽千夜一夜 第255回


ヴェルディのオペラは作曲された順番に完成度が上がると誰かが語っていたが、その最後の最高峰がシェークスピアの原作をオペラ化した「ファルスタッフ」です。

同い歳のワーグナーがアリアが無く朗唱が果てしなく続く楽劇への道を辿ってモンテヴェルディの祖源に遡行していったように、ヴェルディもまた無調を交えた詩歌朗詠音楽の世界へ帰還したのは不思議な暗号の一致であります。

指揮は私がかつてティーレマンともどももっとも期待していた若手のダニエレ・ガッティだがここのところの伸び悩みが気になります。好漢更に精進せよ。フォード夫人役のバーバラ・フリットーリは高音部が苦しいが老練な技巧でカバーしています。

レオンカヴァルロの「道化師」は主役のホセ・クーラが力演していますが、この人のは無闇に力を入れて絶叫するだけの単細胞。せめてドミンゴ並みの演技力を身に付けコキュの苦しみを全身で発散させるようにしなければシフラのリスト演奏のような評価に終わってしまうでしょう。日本人と思しき人物が演出していますが指揮同様どうということはありません。

*歌劇「ファルスタッフ」(ヴェルディ)
バーバラ・フリットーリ、エヴァ・リーバウ、イヴォンヌ・ナエフ、ユディット・シュミット、アンブロジオ・マエストリ、マッシモ・カヴァレッティほか
指揮ダニエレ・ガッティ 演出スヴェン・エリック・ベヒトロフ 収録2011年3月

*歌劇「道化師」(レオンカヴァルロ)
(ネッダ)フィオレンツァ・チェドリンス、(カニオ)ホセ・クーラ、(トニオ)カルロ・グエルフィ、(ペッペ)ボイコ・ツヴェタノフ(シルヴィオ)ガブリエル・ベルムデスほか
指揮 ステファノ・ランツァーニ  振付田尾下哲 収録2009年6月6日


蛙声一際大果てしなく繰り返されるくぁうごう 蝶人

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