照る日曇る日第505回
これは毎年夏に開催されるセミナーの内容を採録した、非常に面白くて為になる宣伝広告販促のガイドブックです。
本邦を代表する研究者や代理店、企業の専門家、実践家たちがカテゴリー別に続々登場、テレビ、新聞、雑誌、ネットなどのメディア論や最新のPR戦略等についての簡にして要を得たガイダンスをしてくれるので、これ1冊を毎年読んでいれば必要にして充分な知識と最新情報を手に入れることができます。
今回特に興味深かったのは女性誌で驚異的な躍進を遂げる宝島社のマーケティング本部長の桜田圭子氏と同社の年に一度の新聞広告を企画してきたコピーライターの前田知巳氏の話で、彼等のレクチャーを聞くほどに、元新左翼活動家社長に率いられたこの不思議な新興勢力が、なぜ売上327億と出版業界の第4位、13のファッション雑誌の売上合計毎月500万部でシェアが音羽グループや一ツ橋グループを蹴散らして業界トップの26.6%に達したのか、その理由がなるほどなあと頷けます。
雑誌を売るべきモノととらえ直し、神聖にして冒すべからざる編集長の特権的職分を打ち破り、編集会議に経営者営業販売担当を参加させ、一番誌を創造するかという共同作業を開始し、全誌に付録を付けたり、その付録内容を書棚で見えるように「上から12センチ」表紙レイアウトに統一したり、価格弾力性理論を適用した強行値下げ作戦で部数を3倍に増やしたりするやり方は、これまで大手老舗が考えたことすらない革命的な素人流ふぁっちょん雑誌マーケティング手法でした。
瀕死の講談社、光文社、小学館、集英社、マガジンハウス等の悪戦苦闘を尻目に、今世紀後半はさだめし宝島社の独奏が続くことでありましょう。
傲慢な玄人が怖れを知らぬ素人の前に膝を屈する日 蝶人
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