Thursday, March 08, 2012

森本恭正著「西洋音楽論」を読んで

照る日曇る日第502回&♪音楽千夜一夜 第247回


クラシックに狂気を聴け、という副題が付いているのだが、全体をつうじてこの人がいったい何を言いたいのかさっぱり分からなかった。

この人がライブやCDを聴くと演奏を聴くと、欧州人の音楽はアフタービートで、日本人は前拍なので邦人演奏家のものはすぐに分かると豪語するのであるが、ほんまかいな。

楽聖ベートーヴェンはほとんどの作品をアフタービートで書いたが第9交響曲の終楽章だけはオン・ザ・ビートで書いたとか、同曲の同楽章の冒頭で「おお友よ、このような音ではなく」とバスが歌い出す直前のオーケストラの強奏で不協和音が鳴り響くのは、「このような非整数の倍音によるノイズ音楽を諸君は受け入れるのか? いやそうじゃないだろ?」と語りかけているのだという著者の推論は、どちらかというと誇大妄想の類ではないだろうか。

しかし「君が代」は世界で唯一戦争を放棄している国家にふさわしく、ヨーロッパの旋律で作られていない(右翼的ではなく)右脳的な国歌であり、いくら軍隊に強いてもこの行進曲では歩けない反戦的な国歌であるという指摘はなかなか興味深いものがあった。


「君が代」は右翼的にあらず右脳的国歌とはつゆ知らざりき 蝶人

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