2008年皐月茫洋詩歌集
♪ある晴れた日に その28
そんなの関係ねえとパンツ男が叫ぶたび叫ぶたびにぷつんと切れる世界とのつながり
自動的に人間にピントが合うという新型カメラを私は買うまい
まずは蝶、次には花と水と土この順番にフォーカスしなさい
講義ではスーツを着てくださいねと言われし真意を忖度しているこの1ヶ月
俳句は諦観とリリシズム短歌は小さな私小説であるよ
またしても5月3日がやってきたとく天皇制を廃止せよ
善ちゃんから経済学部進学を相談されたときあまり親切ではなかったなあこの私
一晩中寝ながら短歌を詠んでおったが朝になるとすべて忘れてしまった
ふとしたはずみで喧嘩して、ふとしたはずみで人殺す それが世の常人の常
しつこく上空を旋回しているセスナ機を撃墜したくなる金曜の朝
大阪の喫茶店の入口で接吻していたロダンの彫刻
心血を注いで描きし作品を二束三文で叩き売るかな
基次郎に触発されし檸檬の絵ドイツ人コレクター安く買いたり
ひとつ描きひとつ売れまた描き続く絵描きの暮らしは過酷なるかな
売ればもう二度とは返らぬ息子の絵命削りて今日も描きおり
道端のすべての塵を拾いあげ、ひとつずつ河に捨てているのはうちの耕君
道端のすべての塵を拾いあげ、河に捨ておるわが子いとおし
「どっちのイアリングがいい」と妻が息子に聞いている
階段を怒涛のように駆け下りる息子のせいで我が家が揺れる
「へーつと」とよく言いし祖父の言葉をいま孫が言う「へーつと」と
妻と子は横須賀の歯医者に出かけわたしは授業の準備をしている
気象庁も予報士もみなうそつきだお詫びと訂正くらいせよ
わがブログに死ねと書き込む人がいてその黒き心我をも黒くす
わがブログに死ねと書き込む人がいてかたじけないがまだその時にあらず
おやおやさかさに振ってももう一滴も歌が出てこないぞ
漆黒のアスファルトを突き破りドクダミの花今年も咲きたり
おそらくはカルバンクラインならむ香水を四囲に振りまく男を憎む
日本人に体臭無ければそとくにの強き香水身にまとうなかれ
10歳若き知り合いが社長になった人の才知は見抜けぬものよ
かつて愚鈍と思いし後輩が大会社の社長になる人の才知は見抜けぬものよ
妻はバタ私はヒラですれ違う横浜栄のプールの真ん中
母上がこよなく愛で給いたるライラックの花今年も咲きたり
黒揚羽五月一日生まれなり
われに来てしばし物言ふ黒揚羽
今朝もまた鶯の歌で目覚めたり
いざともに交尾致さむ揚羽蝶
翡翠の午睡を破る川下り
逆さに振っても歌湧いてこず
耕は泣きムクは鳴いたよ神社の麓で
桐藤ラベンダーわれに優しき薄紫の花
流れよ みこし どんぶらこ
山で生まれたヤマカガシ
山から川へドドシシドッド
山で生まれたヤマカガシ
川から海へドドシシドッド
No comments:
Post a Comment