鎌倉ちょっと不思議な物語118回
さて十二所神社は、神を祭る本殿と拝殿から成り、鳥居・神楽殿も備えたこぢんまりとした神社である。境内は森の麓にあり、春夏秋冬お宮としての感じが好ましい。
鎌倉石によって築かれた神寂びたきざはしも格調があるが、その下に据えられた2基の灯篭も恐らく江戸時代の造りだろう。じつに立派で趣がある。
もうだいぶ昔のことになるが、我が家の耕君がこの近所で遊んでいたとき、どうしたはずみだか、向かって左側の灯篭の笠石の上に乗っているこの重い玉石が、彼の左足の上に落下して大怪我をしたこともあった。
さぞや痛かったであらう。きっとワンワン泣いたことであらう。愛犬ムクももらい泣きしてワンワン鳴いたことであらう。
往時茫茫、その苔むした鎌倉石を見上げながら、いつも想うのである。
神域は明治初年の神仏分離の際に、いったん国有地として召し上げられたが、大日本帝国の敗戦後に無償払い下げを受けて神社の所有地になった。神社仏閣は明治前には神仏混淆、つまり権現であり、神職も社僧として両者を兼務していた。したがって明王院の恵法法印がその職にあったとしてもおかしくはなかった。
しかし御一新の神仏分離によって社と寺とははっきり区別されるようになり、かくて十二所神社は独立をとげたのであった。
♪耕は泣きムクは鳴いたよ神社の麓で 茫洋
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