鎌倉ちょっと不思議な物語46回
昨日はとても悲しい事件があった。
家内が滑川にブルドーザーが入って川床を掃除しているというので見に行くと、草も土も泥もきれいになくなりコンクリートの上を水がさらさらと流れていた。
泥の中に眠っていたカワニナは小さな魚やヤゴ(トンボの幼虫)やカメやカニなどと一緒に鉄の輪に粉砕されておそらく全滅してしまっただろう。
ここは昨年七月の日記でも書いたように天然自然のヘイケボタルが棲息する鎌倉でも数少ない場所である。
初夏ともなれば私たち夫婦だけでなく大勢の住民が橋のたもとに三々五々集い、橋の下や樹木のこずえを舞いながら点滅する微かな光をあかず鑑賞し、それがほとんど老後の唯一の楽しみであるようなカップルもいた。
昔日の栄光に比べれば微々たる数あるとはいえ、ホタルたちはおそらくここに人間が住む前の時代から棲息していたのだろう。
それがたった数時間の「お掃除」で生命の連続の歴史を絶たれる。なんともはかなく悲しいことではないか?
河川工事の担当は藤沢にある県の土木事務所に連絡したところ急遽工事を停止してはくれたのだが、時すでに遅しで、ホタルが棲むスイートスポットは跡形もなかった。
土木事務所の担当者に怒りをぶつけたが、ただ謝るのみ。これからは事前に環境調査を行い町内会などの了解を取り付けてから作業をすると言ってはいたが、一度破壊した環境を取り戻すことは半永久的にできないだろう。
ホタルを人工的に飼育することはできるようだが、天然自然のこの場所で復活させるにはどうすればいいのだろう?
そもそも彼らはいったいどうして河川の清掃を開始したのだろう? 恐らくは期末の予算消化のための河川掃除やっつけ仕事であろう。
この川は高い堤防で囲われておりいくら増水しても氾濫の危険はない。いつのまにか土砂が堆積しそこに草や小さな木が茂ることはあってもそれが景観を美化し動植物の生態系に好ましい影響を与えることはあってもその逆はまったくない。
にもかかわらず、ブルで清掃する理由が分からない。
つい最近私は近所のおじさんがいぬふぐりの可憐な花をなんと火炎放射器で丁寧に焼いている姿を見て驚いたが、どうも日本人という奴はヘンなところで潔癖かつ奇麗好きで、雑草(そんなものは存在しないのだが)や落ち葉は邪魔者であり、不要であり、醜いものだから、きれいさっぱり片付けるという奇妙な風習があるようだ。
ちなみにこの土木事務所は、ここ数年狂ったように鎌倉の山すそを削り、強固なコンクリートの防御壁をいたるところで張り巡らせている。
地震などで傾斜地が崩落する危険があるというのだが、そのために物凄い税金を投入し、ここでも貴重な自然環境を破壊している。
環境と安全の調和を図ろうとする姿勢など、これっぽっちも見えないのは残念である。
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