蝶人戯画録
あまでうすが毎日綴る文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。
Friday, March 23, 2007
♪ある晴れた日に(3)
♪ある晴れた日に(3)
母上を偲ぶ歌
天ざかる鄙の里にて侘びし人 八十路を過ぎてひとり逝きたり
日曜は聖なる神をほめ誉えん 母は高音我等は低音
教会の日曜の朝の奏楽の 前奏無(な)みして歌い給えり
陽炎のひかりあまねき洗面台 声を殺さず泣かれし朝あり
千両万両億両すべて植木に咲かせしが 金持ちになれんと笑い給いき
白魚の如(ごと)美しき指なりき その白魚をついに握らず
そのかみのいまわの夜の苦しさに引きちぎられし髪の黒さよ
うつ伏せに倒れ伏したる母君の右手にありし黄楊の櫛かな
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