Sunday, March 25, 2007

光と影

あなたと私のアホリズム その14

3月23日の日経の朝刊に、理化学研究所が人とマウスに共通する自閉症の遺伝子を発見したという記事が出ていた。

理研では対人関係や言語に障碍などを起こす自閉症と関連の深い遺伝子を発見、この遺伝子が欠損するマウスで自閉症に似た症状が現れたという。

これまで「自閉症の人間における遺伝子の発現異常」は3件見つかっていたが、「マウスと人間で共通する自閉症の遺伝子」が見つかったのは今回が初めてだという。

この研究は理研の古市貞一チームリーダーらが担当したもので、彼らは神経の栄養物質「BDNF」の分泌を調節する遺伝子「CADPS2」に着目。この遺伝子を欠損したマウスの行動を調べると体内時計の異常など自閉症の特徴的な症状が現れた。

そこで自閉症者の「CADPS2」を調べたところ異常が発見された。彼らは今後は「CADPS2」や「BDNF」を標的とする治療薬の開発などを検討するというのである。

これは自閉症者の長男を持つ私にとって30年ぶりの朗報であった。

現在でこそ自閉症は脳の器質障害、中枢神経系の機能障害としてひろく認知されるようになったが、一昔前は情緒障碍だとか、根暗の引きこもりだとか、精神病だとか、母親の育児方法の誤り(母源病)だとか、はては砂糖の摂り過ぎだとか、虚説迷妄が入り乱れて収拾がつかなかったものである。

当時、私たち自閉症の親は様々な病院を訪ねてこの難病の治療を捜し求めたのだが、どこへ行っても薬も対策案もなく途方に暮れたものだ。

溝の穴や水道の水やくるくる動くものなどある特定の事物や行為に固執する症児の行動を、矯正するのか(行動療法)、放置するのか(受容療法)についても学会の意見がまっぷたつに分かれ、親たちを戸惑わせた。

特に弊害が大きかった、と私が個人的に思うのは、神奈川県戸塚ドリームランド近辺にあった国立の某子ども自閉症医療センターである。

ここに勤務していた小児自閉症専門の担当医師は、いま振り返ればじつに時代遅れで、現在ではもっとも非科学的な母源病説を声高に唱え、「お母さん、この病気の原因はあなたの育て方が悪かったからです!」などと偉そうに抜かしていた。

あれからおよそ30年、理研の遅々とした、しかし障碍の本質に迫る科学的な研究成果を、あの自称自閉症専門家どもは、いったいどんな顔つきで読んだのだろうか?

私はしたり顔で中世さながらの「魔女狩り」ごっこを演じていたあの医師たちを、いまなおどうしても許せないのである。

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