降っても照っても 第2回
現在の地球上の人種は、約20万年前にアフリカで原人から進化したただ一人の新人「イヴ」が先祖。その後モンゴロイド、コーカソイド、ニグロイドの3集団に分化するが人種は1つで優劣はない。文字通り、人類は皆兄弟なのである。
人種差別に人類学的根拠はなく、単なる心の問題といえる。また「民族」なる日本語はは明治時代の造語でこれに該当する外国語はない。あえて定義すれば、言語が同じで風俗・習慣や歴史を共有し、同一民族に所属しているという意識を持つ人々の集団である。
人種と言語はまったく無関係である。民族は文化的分類、国民は1つの国家の成員を指す政治的分類であり、「1民族1国家」は大いなる幻想。偉大なアジアの文明から目を逸らし近代欧米文明こそ人類共通の理想であるとする明治以降の西欧中心史観は誤った自虐史観である、と著者は説く。
日本がアジアの一員であるにもかかわらず、アジアに優越感を抱くようになるのが明治時代からであるように、欧州人がアジアに対して優越感を持つようになるのが18世紀の武力進出からである。
17世紀までは圧倒的にアジアに全盛時代であった。その後退期はオスマン帝国が神聖ローマ帝国を脅かす第2次ウイーン包囲に失敗した1683年以後のことである。
1000年史単位で見た世界史では、欧米の覇権などほんの一瞬の夢に過ぎない。むしろ真の文明の繁栄はソグド、匈奴、ウイグル、モンゴル、西域など隣接遊牧諸民族を取り込んで華麗な文化の華を咲かせた多民族国家唐帝国にあった。文明の源泉はソグド人に象徴されえる中央ユーラシアにある。
例えば、ソグド人がもたらしたソグド文字がそのままウイグル文字になり、そのウイグル文字が13世紀にモンゴル文字になり、さらにそれが16世紀末から17世紀はじめに少し改良されて満州文字になった。それゆえ中央ユーラシア国家の清朝にさえソグド文化は受け継がれた。漢民族はあくまで中国人の多数派にすぎない。
また3000年ほど前に中央ユーラシアの大草原に出現した騎馬民族が乗馬と騎射にもっとも便利なように改良した胡服こそがのちの洋服(スーツ)で、これが全世界に広がった。洋服にベルトとブーツがつき物なのもやはり騎馬遊牧民に由来する。
7-9世紀の唐では西域音楽が大流行した。百戯繚乱の唐には儒教の礼楽思想の影響を受けた雅楽、漢代以来の伝統芸術音楽の俗楽、胡楽、散楽、軍楽があった。
胡楽は西域をはじめシルクロード全域から入った外来音楽一般を指し、その中心が西域音楽で管楽器、弦楽器、打楽器のすべてが和フル編成で演奏される声的大管弦楽団であった。一方、当時の欧州では単旋律の教会音楽しか存在しなかった。もってその先進性を想像することができよう。
参考
世界史の8段階
1) 農業革命(第一次)1万1000年前より
2) 4大文明の登場(第2次農業革命)5500年前
3) 鉄器革命(遅れて第3次農業革命)4000年前
4) 遊牧騎馬民族の登場 3000年前
5) 火薬革命と海路によるグローバル化 500年前
6) 産業革命と鉄道(外燃機関)200年前
7) 自動車と航空機(内燃機関)100年前
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