茫洋物見遊山記第95回 & 鎌倉ちょっと不思議な物語第265回
武士たちの信仰と美術と副題されたこの展覧会ではいま非常な話題になっている源頼朝の座像ふたつが展示されていて興味深い。ひとつは従来頼朝のものとされていた国立博物館蔵、もうひとつは最近の研究でこれぞ真の頼朝像と認定されつつある山梨県善光寺の座像である。
いずれも鎌倉時代13、14世紀の製作にかかる木造であるが、前者は日本中世史が専門の黒田日出男氏などの研究をつうじて足利尊氏の弟、直義のものであるとされるようになったのである。
いずれもいかにも鎌倉の武士の棟梁らしい風格と権威にみちた風貌をよく伝えているが、前者はより精悍であり後者は功なり名を遂げた晩年の老成し達成した長者の趣がよく体現されている。これをもし同一人物の年代別の座像といえばそう思えるし、いな全く別人の足利直義その人であるぞよと言われればそうかもしれないという気がしてくるから素人は困ったものである。
いずれにしても一代の風雲児と呼ばれるにふさわしいたたずまいに打たれ、私はしばらく2つの像を見比べていたが、会場を出しなに北条高時筆の紙本墨書「南山士雲像」が飾られているのが目にとまった。高時は闘犬にうつつを抜かした北条政権最後のアホ馬鹿執権として知られているが、その墨蹟の品が下がるのはともかく、彼が師事した南山士雲を描くまるで中村不折のような近代的な筆致に驚いたことであった。
*本展は12月2日まで八幡宮境内の国宝館にて開催されています。
*黒田日出男氏の研究については→http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1747942158&owner_id=5501094
純白のヨットのように走り去る4173湘南ナンバー 蝶人
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