Tuesday, November 27, 2012

ルイ・オーギュスト・ブランキ著『天体による永遠』を読んで



照る日曇る日第551

これはその生涯の大半を監獄で過ごした「黒服と黒手袋のダンディな革命家」の思想を知る上で非常に興味深い1冊だ。ブランキ(1805-1881)は政治改革者であったのみならず当代一流の天文学者でもあり、有名な「革命論集」のほかに本書のような天文と宇宙についての詩と霊感に満ちた科学書を残してくれたことは嬉しい驚きである。

美しい幻想と予言が宝石のように鏤められたこの不可思議な天文の書が綴られたのは1871年のパリ・コンミューンの翌年、監禁されていた倫敦のトーロー要塞の地獄のように劣悪な牢獄の真っただ中において、なのであるが、彼は当時の最新学説であったカント=ラプラスの「星雲論にもとづく太陽生成論」などを批判的に継承しながらも、いかにも革命家らしい大胆不敵な宇宙論を提起している。

彼は全宇宙が無限だとしても、その内部の恒星系群はおよそ100の元素のみによって構成されていることから、その元素が生みだす化合物の組み合わせ(その中には地球やわれわれ人類も含まれている)は有限であるため、全天体はそれがどのような天体であろうとも時空の中に無限に存在すると考えた。

その結果われわれ人間は、この瞬間にも自分と同じ人生を送っている無数の「自分」の分身をこの膨大な宇宙のあちこちに持つことになる。このような「地球&人間複数論」は、ほぼ同じ頃にボードレールやニーチェによっても唱えられて現在の宇宙物理学説に及んでいるが、ブランキのそれはきわめてメランコリックでペシミスティックな点がユニークである。

けれども「宇宙は限りなく繰り返され、その場その場で足踏みをしている。永遠は無限の中で同じドラマを平然と演じ続けるのである」と本書のエピローグで述べたブランキは、しとしとと雨降る今宵も、遥かなる宇宙の彼方で永久に終わることなき彼の孤独な革命運動を遂行しているのだろう。

死してまた蘇りつつ世直しを未来永劫続ける洒落者 蝶人

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