Monday, November 12, 2012

ルイ・マル監督の「五月のミル」を見る




闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.345

ルイ・マルが1989年になってフランスの5月革命を振り返った記念すべき作品。若い時のミシェル・ピコリは嫌な感じだったが、歳を経るごとにいい味が出てきてこの映画ではそれが円熟の頂点に達している。

 南仏の森林地帯で田舎暮らしをしている長男ミル(ピコリ)の母親が亡くなってその葬式のためにミューミューなど多くの親戚がやってくる。ちょうどその時にパリで5月革命が勃発し、首都における学生の反乱の余波がこの地方にも押し寄せてきて、列席者にさまざまな同様と影響を及ぼす。この点が本邦の名作「お葬式」との決定的な違いである。

 死者を前にしながら早くも遺産相続の醜い争いに火花が散るのだったが、革命が高揚するにつれ平和と協生と自由恋愛とフリーセックスへの欲望が亢進し、家族の懐かしい思い出の館を売却せずにそのまま皆で利用しようではないかとお互いの心身が解放的になっていき、とうとういきずりのトラックの運転手とミルの姪が一同の目の前で性交しようとするシーンは思わず息を飲む。

されどミル一族における革命の嵐もしょせんはここまで。ドゴール大統領の議会解散、国民投票の演説と共に5月革命が終焉すると同時に、葬儀が終わって一同が解散し、ミルの暮らしも元の静けさを取り戻すのだった。


じゃが芋にするか玉葱にするか迷うも楽し道端の百円野菜 蝶人

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