Saturday, January 28, 2012

ローラント・ベーア指揮スカラ座の「魔笛」を視聴する

♪音楽千夜一夜 第244回

2011年3月といえば大震災の頃だが、ちょうどその頃にミラノで上演されたモーツアルトの遺作オペラの録画を視聴。さすがはスカラ座という清明な音で序曲が始まったので大いに期待しました。

さてどういう大蛇が出てくるのかと楽しみにしていたが、結局造り物は登場せずアニメみたいな映画の初期の頃のようなあめふらしの映像が出てくる。こういうやり方は最後の最後まで変わらず、ウイリアム・ケントリッジという演出家がコンピューターを駆使した最新の3Dとかに熱意を燃やすその程度の下らない奴だと知れる。衣装だって男はみな普通のスーツ、女はカジュアルなドレスをぞろぞろきているので、せっかくパパゲーノとモノタノスが出喰わしても驚くことができない。ともかく昔の物を現代に塗り変えればよいと信じ込んでいる阿呆の仕事だ。

歌手もみな2流か3流どころで、ややまともに唄えていたのは夜の女王のただひとり。魔笛というオペラの背骨は彼女のたった2つの超絶アリアで成立しているので、これが壺をはずしていると最悪だが、その点ではまあ良かった。

そんな次第でようやく幕が降りるがまだしつこくCGのお絵描きゴッコをやっている。なんの霊感もないルーチンワークの下らない演奏にラアラアと歓声を上げているスカラ座の観客を見たら、死せるトスカニーニも激怒するだろう。墜ちるところまで落ちればいつか浮かぶ瀬もあるのだろうか。

この録画放送の案内をしている顔がグチャグチャになった作曲家が、最近の研究でモーツアルトの妻コンスタンツエと彼の弟子のジュスマイアーが不倫していたことが判明したと語っていたが、ほんとななあ。

出演:サイミール・ピルグ、アリビナ・シャギムラトワ、ゲニア・キューマイア他 
指揮:ローラント・ベーア 演出ウイリアム・ケントリッジ


アラカシの枯葉に似せて横たわるムラサキシジミに幸いあれ 蝶人

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