Sunday, January 15, 2012

カン・ジェギュ監督の「シュリ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.186

朝鮮半島の緊張が高まる中で北の工作員が南に潜入し、テロ活動を繰り広げる。そしてなんと両国共同開催の世界サッカー戦のさなかに両国首脳を暗殺しようというハチャメチャな話になるのだが、この国家テロルのスリルとサスぺンスに北の最強の美女と南のハンサム捜査員の運命的な恋がからんで、物語は最後のクライマックスを迎える。

んでもって、結局わがロメオは泣く泣く愛するジュリエットを葬り去るんですが、この映画は、酷薄な国家間の対立と戦闘が続く限り、個人のささやかな幸福など虫けらのように押しつぶされてしまうんだ、というひとつの事例を提出して、一日も早く憎悪ではなく愛を、戦争ではなく平和を、と願う反戦映画のようなスタンスをとってはいるものの、そのフィルムの下半身を染めているのは刺激の強い見世物、底の浅いエンターテインメント性ではないだろうか?

戦争以来両国激烈な対立が続いて多くの死者が出ているというのに、その一方の当事者が、この冷酷で悲惨な現実を、一種の見せもの、娯楽としての映画に祭り上げている図太い神経がわたしのような門外漢にはてんで分からない。見ようによっては図太い骨太の反戦映画なのかもしれないが、じっさいに両国の暴力装置が一触即発の国家的対決に明け暮れているさなかにこんな能天気な戦争映画を見物することには、超右翼で保守派の私にはちょっとした抵抗がありました。

わかりました行ってみますてふ息子の言葉を頼もしく聞く 蝶人

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