Friday, January 27, 2012

ジャック・リヴェット監督の「ランジェ侯爵夫人」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.193

ヌーヴェルヴーグの生き残りリヴェットの2007年の最新作をその翌年に37歳の若さで惜しまれつつみまかったギヨーム・ドパルデューが熱演しています。原作はバルザックの短編で、原題は「斧に触れるな」です。

彼が扮する19世紀のナポレオン軍の名将軍で軍務一筋の不器用な男が、妖艶な社交界の花ランジェ侯爵夫人(ジャンヌ・バリバール)の色香に迷ってたちまち恋に落ちる。ところが侯爵夫人は彼女が知らなかった荒鷲のように無骨な男に魅せられながら、その純情をもてあそぶ。ついに男の怒りの斧に触れたのです。

業を煮やした武人は彼女を拉致して強引に愛を迫るのですが、それがかえって逆効果となり酷薄な女の前から姿を消す。すると追えば逃げ、逃げれば追うのたとえどおり、今度は女の方が失った恋の大きさに耐えかねて恥も外聞もかなぐり捨てて男を求める。

命を賭けて無二の愛を求め、それが得られずに侯爵夫人が選んだのは海の彼方の絶海の孤島でした。そして映画は息詰まるような緊迫感を保ちながら悲劇の大団円に突入するのですが、これは見てのお楽しみ。それにして男女の愛の本質をぎりぎりと抉り取るこんな珠玉の名作を夢も希望もない平成ニッポンの私たちに贈ってくれたジャック・リヴェットには感謝の他はありません。


枯葉の中にムラサキシジミとテングチョウが越冬していた枯葉となって 蝶人

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