Friday, January 13, 2012

東博の「北京故宮博物館200選」を見て

茫洋物見遊山記第76回

寒い寒い木曜日の午前11時に到着して長い列の最後に並びました。会場の入り口に到着するまでに1時間、次いで場内で立ちん棒となって時たまゆるゆると歩むこと3時間、2冊の小説を読了しつつ都合4時間かかって目視することができたのはこの博物館の至宝と称する「清明上河図巻」でした。

10メートルくらいの長さのこの墨絵の絵巻物は、精妙な筆致と巧みな造形で当時の北宋の商都の大川端のにぎわいを描いていましたが、人物も船も橋も街の甍も小さすぎていくらガラス越しに両目を近づけてもろくろく見えやしない。道理でその周囲には大きな拡大図が張り巡らしてありましたが、それとこの本物は色も違うしバランスも異なる。結局見たのやら見なかったのやら分からないままその特別室を出てしまいました。

張拓端筆と称されるこのどこかレオナルドを思わせる写実的な筆致には魅せられましたが、これが中国一の名品かどうかはうかつに語れない。同時代の本邦は平安時代の後期ですが「信貴山縁起」「伴大納言絵巻」「源氏物語絵巻」のようにもっと芸術的に価値の高い優れた絵巻物を輩出していました。

後代の南宋や元の図巻も並んでいましたが最近の琳派の絵画になじんだこちとらの心眼にはどうもしっくりこない。出品の3分の2くらいは清朝の絵や衣装や装飾品やインテリアなどでしたが、わたくし的にはこんなものは豚にでもくれろと言う代物でまったくつまらない。期待していた陶磁器もろくなものがない。多少とも評価できるのは北宋南宋から元にかけての行書のコレクションでした。

中国の国宝的逸物を200も選りすぐったという触れ込みですが、これではまるで羊頭狗肉。新年早々のワーストコレクション。もっともっと凄い作品がこの博物館には秘蔵されているはずです。もしそうでなければ……。

もしそうでなければ、唐天竺の影響を脱して見事に生まれ変わった本邦の諸芸術の価値は、わたくしが考えている以上に、天下無双のレベルに到達しているのでしょう。



相変わらずお前はアメリカの属国だなイランの石油が要らんとは 蝶人

No comments: