Wednesday, October 19, 2011

サバリッシュ指揮の「シューベルト宗教的世俗的合唱作品集」を聴いて


音楽千夜一夜 225

シューベルトのミサ曲全曲に加え、彼が友人たちを囲んで開いた小さなサロンコンサート(シューベルティアーデ)のために作曲した家庭的な合唱曲などもまとめて収録した全11枚組の超廉価盤(@233円!)CDである。

ウオルフガング・サバリッシュのブラームスをウイーン饗と入れたフォンタナ盤ではじめて耳にした時には「おおこれは!」とその初々しさに刮目したものだが、以来馬齢を重ねて幾星霜、いくたびアホ馬鹿N響のライブをロバの耳で聞いても(ブロムシュテットと同様)感動のひとかけらもなく、いたずらに教条的な音符を巨大な犬小屋にまき散らすのみ。結局バイエルンのオケといれたシュトラウスのオペラとこの選集、そしてかつての同僚カルロス・クライバーへの温かい支援くらいが後世への貴重な贈り物となるのであろう。

ここに並べられた作品はどちらかといえばマイナーな曲ばかりだが、ミサ曲に聴かれる様々な斬新な意匠や老子の「論語」に曲をつけたD69など、知られざるシューベルトの一面に驚かされる。アーノンクールのような外面的なあざとさを拝し、ひたすら謹厳実直に演奏するサバリッシュの凡庸な音楽が、かえって夭折した天才へのこよなき愛と祈りを感じさせるのが皮肉である。

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