Saturday, October 22, 2011

セルジオ・レオーネ&ロバート・アルドリッチ監督の「ソドムとゴモラ」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.161

旧約聖書の「創世記」第19章にでてくる有名な乱倫と退廃の街を舞台にした1961年製作の映画であるが、聖書の簡単な叙述を近代的な間隔で自在に脚色した結果、面白くて見ごたえのある作品となった。

古代ヨルダンの死海の近くにあって、その住民たちのあまりの背徳と酒池肉林を憎んだエホバによって一夜にして滅ぼされたこの有名な逸話を、米伊のふたりの監督が心に深くしみる立派な史劇映画に仕上げた。

共同監督の一人アルドリッチが、エホバによみせられながらいつしかソドムとゴモラの悪徳に蹂躙されてゆくロトと妻、2人の娘の人としての弱さを描き、もう一人のレオーネが砂漠の民の争闘や滅びゆく魔都の阿鼻叫喚の姿をスペクタクルに描いたに違いない。

もっとも印象に残るのはアヌーク・エーメで、人間の欲望と精神の暗部を知りつくし、神を否定し、奸佞邪知の限りを尽くしておのが権力を維持しようとする魔都の美貌の女帝を演じ尽くして申し分がない。

ここではかたくなに欲望と快楽の極限を生き切ろうとする人間が、かたくなに教義に忠実に生き抜こうと努力する人間よりも、より倫理的かつ人間的であるかのように見える逆転現象が生じており、天からのいかずちによって罰せられる女帝が、まるでモーツアルトの歌劇ドン・ジョバンニの地獄落ちの姿のように見えてくるから不思議である。

落下して骨折りし妻に忠義立て痛い痛いと泣くオンボロ自転車 蝶人

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