Sunday, April 17, 2011

吉川真司著「天皇の歴史02聖武天皇と仏都平城京」を読んで


照る日曇る日 第424回

いったん天智から天武に移行した王権が、文武、聖武、幸謙・称徳を経て光仁からその子桓武天皇に移った時点で、平城京は7大寺を拠点とする仏都に転化せしめられ、政治経済の拠点は長岡京を経て平安京に定着することになりました。

本書はさらに桓武以降の皇位が、平城、嵯峨、淳和、仁明に継承され、王権政治が崩壊して律令体制を基盤とする摂関政治へと転換されていくさまを分かりやすく記述しています。

私が特に興味深く読んだのは、平安京を開いた桓武天皇の事績です。自己の権威付けのために父方の天智系皇統を称揚した桓武は、今度は当時、「蕃人」視されていた百済系渡来氏族の出身である母方のイメージアップに取りかかります。

亡き母親和新笠に皇太后のおくりなを与え、交野を本拠とする百済一族に対して叙位を行い、「百済王らは朕の外戚なり」と宣言した桓武こそは、今も昔も本邦に根強く存在する朝鮮民族に対する故なき差別意識に対する史上はじめての公的挑戦者だったのではないでしょうか。

もっとも弥生時代に朝鮮半島から大量に移住してきた弥生人のDNAが私たち現日本人の血肉にどっぷり内蔵されていることを思えば、天皇桓武の賤民意識脱却の国策キャンペーンなど、はなから無意味であったわけですが。

この桜見せてあげたし二万人 茫洋

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