Friday, April 29, 2011

メットのエド・デ・ワールト指揮「ばらの騎士」を視聴して

♪音楽千夜一夜 第194夜

2010年1月19日にメトロポリタンオペラで上演されたシュトラウスの代表作をビデオで視聴しましたが、あまり景気のいい話は書けそうにありません。というものこのオランダの指揮者の音楽がリヒアルト・シュトラウスをまったく自家薬籠中に収めていないからです。

彼は長くオランダのロッテルダムのオケを率いていたベテランで、ワーグナーなどはなかなか聴きごたえのする音楽をやるのですが、終始平板な劇伴を垂れ流すのみでありました。

演出はナサニエル・メリルという聞いたこともない人ですがこのオペラハウスの巨大な空間の処理を持てあまして凡庸の極致ですし、侯爵夫人がルネ・フレミング、オクタビアンがスーザン・グレイアム、ゾフィーがクリスティーネ・シェーファー、男爵がクリティン・ジグムンドソンという布陣は、当代の歌手の水準としては上等の部類に属するのでしょうが、往年のシュワルツコップやルチア・ポップなどの歌声が焼きついた耳にとっては格別の感慨はさらさらなく、この程度の優等生的な節回しにブラボーの声を惜しまない当夜の観衆のおそまつさに呆れかえったことでした。

唯一の救いは当日のインタビュアーにプラシド・ドミンゴが登場したくらい。先だって見物した同じ劇場の「カルメン」が抜群の出来栄えだっただけに、残念無念の3時間となってしまいました。こんなことなら高橋源一郎でも読んでいたほうがよかったな。


闘牛に突き殺されし夢見たりビゼーの「カルメン」を聴きし夜 茫洋

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