Thursday, April 21, 2011

シュテンファン・ルツオヴィスキー監督の「ヒトラーの贋札」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.117


第2次大戦中に強制収容所のユダヤ人たちが動員されて大量のポンド紙幣を捏造する話。まさかと思ったが、実話でこの映画にも登場する印刷工の手記が原作になっている。

この原作者はもう少しでドルに成功するところだった偽札作りをサボタージュすることによってヒトラー一味に抵抗し続けるのだが、映画も観客もそんな政治的レジスタンスなんかどこ吹く風で、いつのまにか贋札製作チームに陰で声援を送っている感じになってしまうのは妙な気分だ。

なんでも1億3200万ポンドの精巧無比な偽札を作ったそうだが、それで英国政府がどれだけ打撃をこうむったかといえば、あんまり関係ないだろうな。それでもこういう映画やジッドや島田雅彦の小説などが相も変わらずつくられるのは、おそらく人間は誰しも偽札を作って蕩尽してみたいという欲望が心の底にあるからに違いない。

一夜のカジノで巨萬の偽札を失いながら、「また作るさ」と豪語する主人公が、うらやましくなってしまった。


声高に時の政府をなじる人きっと君ならうまくやるだろ 茫洋

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