Saturday, April 16, 2011

ノーマン・ジュイソン監督の「アメリカ上陸作戦」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.116 1966年に製作された「ロシア人がやって来た」という原題の所謂ひとつの爆笑コメディです。 1966年という年はベトナム戦争開始の翌年でありいわば冷戦の真っただ中なのに、米ソ両国の政治的対立ではなく、両国民の等身大の生身の接触を面白おかしく、恐ろしく、余裕を持って描いたこの監督の知性と勇気は称賛に値します。 冒頭、アメリカのさびれた海岸で突然座礁してしまったソ連の潜水艦の艦長のキャラがもう完全な漫画で、これを引っ張る大きなボートを求めて部下たちが上陸し、小さな町の住民たちと無数のトラブルを引き起こすところからこの映画はスタートします。 そしてその次の瞬間から繰り広げられるのは、突如出現した黒船と敵国人によってもたらされた抱腹絶倒の誤解と妄想、誰しも身に覚えのある異貌の他者への敵意と殺意、一蝕即発の戦争への狂気、そしてそれらを否定的な媒介として自然発生的に生まれてきた温かで人間らしい感情と恋愛!、さらには人類の恒久平和へのほのかな希望と小さな連帯の赤襷等々……。 この芸達者な監督は、戦争と平和のカレードスコープを、これでもか、これでもかのてんこもりの大サービスで見せつけてくれるのです。  上野にて桜咲く日に母逝きたり 茫洋

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