Friday, April 22, 2011

ジョン・マッデン監督の「恋におちたシェークスピア」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.118

監督や主演俳優についてはヒロインのバルトロウの乳房の尖り方が美しいという以外に格別言うべきことはないが、「未来世紀ブラジル」や「太陽の帝国」の脚本を書いたトム・ストッパードの卓抜な思いつきがことのほか素晴らしい。

シェークスピアの「ハムレット」に拠る戯曲も書いている彼は、本作ではわが偏愛の奇書「ソネット集」をひとひねりして、若き日の沙翁の恋愛譚をこしらえた。

沙翁の「ソネット集」は謎の美貌の青年貴族とこれまた謎の「ダークレディ」への愛を描いているが、ストッパードはこの映画のヒロイン、ヴァイオラを男装させることによって、沙翁の両性愛、バイセクシュアリティをビジュアライズしようとしている。

すなわち、あのオスカーワイルドが着目した「ソネット20番」の、

姿かたちは男だがすべてのかたちをうちに従えている。

だからその姿が男の眼をうばい、女の魂をまよわせる。(高松雄一訳)

の艶姿に翻弄される沙翁を描こうとしたわけだが、それにしてはバルトロウも、ましてやジョセフ・ファインズも明らかに役(者)不足で、この優れたシナリオでの再映像化を望むこと切なるものがある。

しかしながら、沙翁の恋が「ロミオとジュリエット」の戯曲&上演と同時並行で生き生きと進行していくことや、ロミオ上演の成功が同時に2人の現世の恋の終わりであり、それを次作の「十二夜」のプロットへと接ぎ木していく脚本家のアイデアはこれまた秀逸で、沙翁への永遠の愛を胸に秘めたヒロインが、未踏の荒野に歩み去るラストシーンは、ほとんど感動的でさえある。

一票を投じた党の無様さは我等自身の無様さでもある 茫洋

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