Monday, April 04, 2011
エロール・モリス監督「フォッグ・オブ・ウオー」を観て
闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.115 フォードの社長就任5週間後にケネディ大統領に請われてアメリカの国防長官に就任し、ジョンソン大統領に仕えてベトナム戦争を指導し、1968年~81年まで世界銀行の総裁を務めたマクナマラのロングインタビューが2003年に映画化された。 ここでは彼が波乱の生涯から学んだ11の教訓に準じて、11のパーツがうまく編集されているのが面白い。 例えば「敵に感情移入せよ」というテーゼがあったからこそケネディはフルシチョフとの間で一触即発の危機を避けられた、とか、「戦争にもバランスが必要だ」という命題を無視したから彼の上官のルメイは1晩で10万人の東京人を虐殺した、とか、「理性は頼りにならない」からこそ冷戦中に3度核戦争の瀬戸際まで行ったが、「自己を超える何かがある」からこそ、地球滅亡を避けられたという塩梅に過去が自在に想起されるのである。 しかし彼は原爆投下や投球大空襲、北ベトナム爆撃などに対する一定の責任を認めつつも、その最終責任はつねに彼の上級管理職であるルメイやジョンソンになすりつけ、己の主体的な自己批判はいっさい回避して口を噤むあたりが、卑怯でもあり老獪でもあり、人間的であるとも映るのであるが、それにしてもインタビュアーのキャメラのレンズにまともに向き合い、正々堂々と批判に答える態度はいさぎよくて男らしさも感じる。 彼は過去に多くの失敗を犯したことを認めながら、しかしその失敗を「後知恵」で反省し、再度の失敗を防止しようと願ってこの映画に出演したのである。 マクナマラの教訓の第10番目は、Never say never。そして最後に「人間の本質は変えられない」と来てこの映像回顧録は幕を閉じるのだが、彼の提案を受け入れ、ベトナム戦争からの撤兵を受け入れた直後に暗殺されたケネディの思い出を語るとき、突然の驟雨に濡れそぼるマクナマラの真っ赤な目に、彼のJFKへの忠誠と献身を感じないわけにはいかなかった。 決して「決して」とは言うなとマクナマラ語りき 茫洋
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