Monday, March 09, 2009

レイモンド・カーヴァー著・村上春樹訳「滝への新しい小径」を読む

照る日曇る日第241回

五〇歳で亡くなった米国の作家の遺作詩集である。

ガンで五〇歳の男が死ななければならない、ということはどういうことか、次の詩を読むと分かる。

「若い娘」
思わずたじろいだ出来事をみんな忘れてしまおう。
室内楽にかかわることもすっかり忘れてしまおう。
日曜日の午後の美術館だとか、そういうあれこれ。
古き時代の巨匠たち。そういうものすべてを。
若い娘のことも忘れよう。なんとかしっかり忘れてしまおう。
若い娘たち。そういうあれこれすべて。 ―The Young Girls


そして、カーヴァーの最後の詩集のいちばん最後におかれたのは、次の数行だった。

「おしまいの断片」

And did you get what
You wanted from this life,even so?
I did.
And what did you want?
To call myself beloved,to feel myself
beloved on the earth.    ―LATE FRAGMENT


生涯の最後の最期である 人よ何を想うか 茫洋

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