Wednesday, September 26, 2012

マイケル・カコヤニス監督の「その男ゾルバ」を見て




闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.317


原題はただの「ギリシア人ゾルバ」。この映画を見て驚いたのは、クレタ島の住民の余所者と仲間内の異端者に対する恐るべき敵意と反感であった。

彼らは外部から訪れた我らが主人公(アラン・ベイツ)が島一番の美女(イレーヌ・パパス)と恋に落ちて一夜を共にしたと知るや、(まるでヨハネ伝第8章に出てくるような光景!)、全員で石を投げつけ、あまつさえ(まるで子羊をほふるように)ナイフで喉を切り殺してしまうのであるが、かつての華やかな古代文明をになった末裔たちがこんな野蛮な振舞いを実際に行っていたのであろうか?

もしもそうならとんでもない話であるし、事実無根ならこの映画の描き方に対してきちんと提訴するべきだろう。

それにしてももしこれが実話で、おのれが愛した美しい未亡人が村人に虐殺される現場に居合わせた物語の主人公が、何もしないで傍観していたならこれこそ天人絶対に許されない行為だと思う。

そしてこの哀れな未亡人役を演じるアラン・ベイツとともに比類ない人物造型を示すのはフランスから村に漂着した元踊り子のリラ・ケロドヴァ、そして表題ゾルバ役のギリシア人を演ずるアンソニークインで、特に後者の人間マグマのごとき不滅の存在感はさながら「最後のネアンデタール人」のようだ。


現世の有象無象を見下して君は最後のネアンデタール人 蝶人

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