照る日曇る日第525回
第2部ではいよいよ決戦の時を迎えた日米両軍の死闘が膨大な資料を読み込み、最新の取材を駆使して分刻みで「事実」が詳細に再現・検証されるが、ここでも特徴的なのは日本側の指導者たちの油断であり脳天気であり白痴的な思い込みと非科学的独断である。
著者は、海戦の当日の朝、南雲機動部隊が旗艦赤城から全艦隊に発した「本日敵出撃ノ算ナシ」という信号命令が、その後の雷爆転換作業、そして第2次攻撃隊発進遅延へと続く海戦大敗へ誘導する導火線となった」と断じている。
ミッドウェイ海戦の結果、日本軍は空母4、重巡1、搭載航空機285、熟練搭乗員109組と多くの戦闘員(その中には第2航空船隊司令長官と加賀、飛龍、蒼龍艦長の殉死を含む)を、米軍は空母1、駆逐艦1、航空機147とその乗員を失ったが、この空母決戦を契機に太平洋における制海権と制空権は急速に米軍の支配下に入ることとなり、その趨勢が逆転する機会はついに訪れなかった。
本書によれば、「1年や2年は暴れてみせる」はずの連合艦隊が、開戦わずか半年で犯したこの致命的な蹉跌の原因について「温情あふれる」山本五十六はいっさい不問に付し、無数の陛下の忠良な兵を絶海の鱶の餌食にした南雲、草鹿、源田などの無能な指揮官(常に戦わずして戦場から逃亡し続けた栗田ほど酷くはなににしても)の責任と作戦指導の誤りを一言も追及することなく放置し、第3艦隊の要職につけることによってさらなる誤りを犯したのであった。あまつさえ彼らは海戦の真実を国民、そして天皇に対しても隠そうとはかったのであった。
情けないわれらが指揮官たち(山口、加来、柳本を除く)に比べて、本書にあって高く評価されているのは、敵ながらあっ晴れな第16機動部隊司令官である。
生まれて初めての航空戦指導にもかかわらず、他人の進言を容れる雅量と沈着冷静な判断力、そして広範な戦場の全貌をよく呑み込んだ大胆不敵な戦術(航空機の全力投入)で2隻の空母を駆使して指揮「赤城」、「蒼龍」を撃沈したレイモンド・A・スプルーアンス少将のような軍人がわが陣営にあったなら、と思わずにはいられない。
けふ大暑「退会したユーザー」が気になるミクシィかな 蝶人
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