♪音楽千夜一夜 第270回
昔むかし音響効果が犬小屋のように最悪なNHKホールの、しかも3階席で、N響を振る内外の指揮者たちの演奏を聴いていましたが、弱音はほとんど届かない。仕方なく2時間丁度居眠りをしてから立ち去っておりました。
ところがある時、フランス国立管弦楽団と来日したマゼールがベルリオーズの「ロメオとジュリエット」をやったときは思わずたまげて腰を抜かした。あの空虚な犬小屋を怒涛のように揺るがすフォルテッシモが、3階席でねんねぐーしていたわたくしを直撃したのです。
そのあとパリで聴いた彼のドビュッシーの「ペリアスとメリザンド」がこれまた眼の覚めるような名演で、このとき私はロリン・マゼールという人の指揮術の手練手管に恐れいった次第。
その手練手管があんまり度が過ぎて器用貧乏になってしまったので、だんだん敬して遠ざかるようにはあいなりましたが、ここで聴くクリーブランド菅とのベートーヴェン全集やベルリオーズの「幻想」、ピッツバーク響とのシベリウスの全集やサンサーンスの「オルガン付き」、ベルリンフィルとのワーグナーなどは、1枚130円の値段以上に聴きごたえがあります。
豚死せよマーラー9番アダージョに携帯呼び出し音を伴奏する男 蝶人
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