Saturday, July 14, 2012

トマス・ピンチョン著「LAヴァイス」を読んで





照る日曇る日第523


ロスの私立探偵が70年代の洛陽悪徳都市で例によって例のごとく繰り広げるという、まあんずアホ馬鹿パラノイア物語だなあ。

ここでは60年代の明るい歌と踊りは影をひそめ、ニクソン流の新資本主義と現実主義が新たな法と秩序の締め付けをあたりかまわず強要してくるんだが、本書のとんちき主人公は「舗道の敷石の下はピーチ!」などとうそぶきながらすでにあらかた失われた60年代のノリでハッパを吸い吸い、時代の巨悪に向かって孤立無援の蟷螂の斧を振りかざそうとするんだね、これが。

既にして悲愴であり滑稽そのもののテイタラクであるが、ピンチョンときたら今が21世紀のはじめであると知りながら、あえてこの不毛と苦渋の時代におのれの分身を突入させて、もういちど宴のあとのアホ馬鹿踊をやらかそうとしているみたいだ。

しゃあけんど2009年に書かれたというのに、なんて不敵な面魂だろう、経歴も年齢も不明なこのダイマイトガイは!

と、 “チンポの根っこから”(注 翻訳原文のまま)思うよ。

おいらも当時のロスに潜入して、フランク・ザッパとロス・フィルの異文化交流コンサートとやらを聴いてみたかったゼイ。


ここでは私は一人の芸人として自由に歌うことが許されている 蝶人


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