茫洋物見遊山記第88回
会期間際に滑り込みセーフでした。(6月24日まで開催中。木曜休館)
いわゆるひとつの超現実主義を代表する画家、彫刻家として知られるこのドイツ人(1981-1976)の代表的な油彩、コラージュ、リトグラフ、エッチング作品などがてんこ盛りの回顧展でしたが、私が気に入ったのはやはり油絵でして、深い森の中の鳥を描いた「自由の称賛」や全体的に縞柄で横断されたランボー風の「海と太陽」、緑と朱の色彩の饗宴「小麦の芽吹く風景」、それに後年の「パリの春」「美しき女庭師の帰還」などは、シュウマイの代わりに横浜土産にこっそり持ち帰りたい気持ちになったほどでした(セザンヌ展では毛頭その気にならなかったのに)。
世の中にこのひとほど素晴らしい絵描きはいないと断言する。妙な屁理屈を考えたり、コラージュ、リトグラフ、エッチング、彫刻なぞに手を染めず、もっともっと油絵を沢山遺して欲しかったなあ。
ところで、こういう抽象画は描く側も何かを象徴しようとして画筆を握り、一癖もふた癖もある捻ったタイトルをつけており、見る側もその象徴の意味を解読しようとして作品の前で頭をひねるようですが、そういう「知性的な」鑑賞方法はじつはてんで無用の長物であり、わたしらはこれらの意味不明の形態と色彩のぬたくりにじ、じっと目を晒し続けておればよいのです。
美術作品を前にノートを取ったり、にわかにあれやこれやの想念を繰りだし、それをいちいち言葉に置き換えてもっともらしく解釈したり、はたまた(私がいましているように)家に帰って感想文をしたためたりすることは、ほんたうの美術(あるいは音楽)鑑賞からいちばん遠い行為であり、自分をとらえて離さない作品だけを無上の快感と共に即自的現在的にいついつまでも享受すればよいのだ。
慣れない外出でいささか披露したので即帰ろうとしたら、隣の会場で「横浜美術館特別コレクション」をワンサと開陳していて、それらを全部見たので帰ろうとしたらなんとなんと「マン・レイの写真展&作品展」をやっていて有名な「解剖台の上の蝙蝠傘とミシンの偶然の出会いのように美しい」を見ることができたので、やれやれやっとこれで帰れるぞ、と思ったら、またその隣の会場で「中平卓馬60年代&70年代の写真展」をやっていて、これが一等凄まじかった。
マックス・エルンストにはじまって中平卓馬に終わる金1200円のめくるめく美術体験こそ、「平成24年版シュルレアリスム」そのものではないでしょうか。
民主党はもう終わりです解党するか即解散総選挙しなさい 蝶人
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