Sunday, April 22, 2012

ルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.229 アンリ・ドカエのキャメラによるモノクロームに映えるジャンヌ・モローとモーリス・ロネのなんと若々しく美しいことよ! 1958年の巴里が懐かしい。 夜のアウトドア撮影、即興的な編集、マイルス・デイビスのジャズなど、当時としては斬新な演出を試みてはいるが、それは表面だけでひと肌めくれば本質的には2つの恋の破綻を描く昔ながらの世話物映画なり。 社長夫人が恋人に頼んで夫を殺させ、恋人は事故でエレベーターの中に一晩中閉じ込められる。その間に恋人の車、拳銃を盗んだ若い恋人たちが殺人事件を起こしたりするが、こういう流動する人物とプロットを最後にがっつりと受け止めカタストロフを終始させるのがリノ・バンチエラ扮する刑事の頑強な肉体で、この男が登場した途端に浮遊し情動していた行く宛てなしのドラマがやっと着地する古典的な仕掛けだ。 あとの写真現像室でのモロオの哀愁やら慨嘆なぞはグリコのおまけ。むしろこの作家の旧い古い体質をあらわにしている。 もっと旧弊な点は一見無軌道な若者たちの描き方で、彼らが睡眠薬で自殺しようとする場面で流れているのはなんとボッケリーニのメヌエットなのである。未来に絶望して自爆するゴダールの若者像などとは同じヌーベルヴァーグ作家といってもずいぶん作風が異なる。 小泉画伯より頂戴したる成城風月堂のカステラを喰い尽くしたり 蝶人

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