闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.227
人種問題などに進歩的な見解を有する新聞社の社長夫妻(スペンサー・トレーシーとキャサリン・ヘプバーン)の家に突如娘が連れてきた招かれざる黒人婚約者シドニー・ポワチエ。
おまけに彼の両親まで同家を訪れることになり、さあ血気に逸る一目惚れの若い男女を、酸いも甘いも噛み分けた大人たちがいかにしてこの海あり山あり地獄ありの難題をうまく着地させるか興味津々だが、そこはそれ才人スタンリー・クレーマーが名優トレーシーの見事なスピーチでめでたくお開きにするという鮮やかなオチをつける。
私の身内に黒人と結婚した女性がいるが、いつだったかの親戚の集まりでその二人が姿を現した瞬間、私も含めて一瞬固唾を呑んだことを思い出した。一九六七年という時点のアメリカでこういうホットなネタを映画にすること自体、かなりの勇気を必要としたに違いないが、そういうリスクも製作者を兼ねた「手錠のままの脱獄」を世に送ったクレーマーがきっちりと取っていることに改めて脱帽する。
さりながら、もしこの映画の主役の黒人(ニグロと発音されていた!)が世界的に著名な医師ではなく、ただのあんぽんたんかイカレポンチであったら、かの良心的インテリたちが最終的に結婚に同意したかどうか、なぞと考えてみるのも無意味ではないだろう。
浅き夢残して今朝は櫻散る 蝶人
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