bowyow megalomania theater vol.1
暖かい日でした。
砂丘の向こうには海が広がっていました。太平洋でした。
はるか彼方の水平線を一艘の漁船が波にもまれながら息も絶え絶えに東の方角へ消えてゆきました。
強風にあおられながらたくさんのカモメが上になり下になりながらヒューヒューと鳴き叫んでいます。
僕たちの体はたちまち冷え切ってきました。急いで砂防林まで引き返すと、そこは不思議なことにまったく風が凪いでずいぶんと気温も高いのでした。
松やススキやスイセンが茂る雑木林のくぼみに座って、僕たちはマツポックリを拾いました。
洋子の髪の毛の中に細かな砂粒がいくつも入り込んで、その砂粒が午後の太陽の光を反射して時折キラリキラリと耀くのがとても奇麗でした。
僕は思わず洋子の顔に両手をあてて、真っ黒な髪の毛の真ん中のところに鼻を近づけてその匂いを深々とかぎました。
懐かしいお母さんのような匂いがしました。
そのまま洋子の頭を左肩の上に乗せ、両手を背中に回すと、洋子の頭が僕の肩の上でガックリとうなだれるのが分かりました。
何の花が好きかと尋ねれば山百合が好きと答えし人ありき 蝶人
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