Wednesday, August 10, 2011

ピーター・デイビス監督「ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実」を観て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.138

1974年に製作されたベトナム戦争をめぐるドキュメンタリー映画です。

サイゴンの警察長官がベトコン容疑者の頭をいきなり拳銃で撃ち抜く有名なシーンが挿入されていますが、おのが国家利害のためには世界の果てまで出かけて行って陸海空から最新兵器を駆使して敵を皆殺しにするこの国独特の西部劇保安官体質は、それから30年以上経っても基本的には変化せず、イラクからは辛うじて逃亡したもののアフガニスタンの荒野ではベトナムと同じような泥沼に飛んで火に入る夏の虫、いずれは威厳も栄光も誇りも全部投げ捨てて、すごすごと尻尾を巻いて母国へ逃げ帰るに違いありません。

建国後わずか200有余年にして早くも経済も政治も社会構造も醜く歪んで衰弱し始め、中国を筆頭とする経済新興国から激しく追い上げられているこの自称「世界の警察官」も、そろそろその夜郎自大な自己中心主義の幕引きを余儀なくされる時期がやって来たようで来たるべき新世界平和のために誠に慶賀に堪えません。

それはともかく、彼らの心情や精神が幽かに揺らぎ始めたとはいえ、その世界に冠たる傲岸尊大なイデロギーがまだまだ健在だった時代に刻印されたこの映像は、帝国崩壊の最初の自己認識の証左として末長く顕彰されることでしょう。

小便すれば付着する黄色い滲みこれぞわが耄碌の証なりけり 蝶人

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