Tuesday, August 16, 2011

溝口健二監督の「新・平家物語」を観て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.139

吉川英治の原作を依田義賢らが脚色して溝口が1955年に映画化した。

貴族主人公の清盛を若き市川雷蔵が熱演しているが、この人はどんな映画に出てもけっしてうまい演技をしたと思ったことはない。さしずめ日本のアランドロンというところか。

本作でもむしろ母親祇園女御役の木暮美千代や父親忠盛役の大矢市次郎、妻時子役の久我美子などの脇役が充実している。

清盛には白川上皇の落胤ではないかという説があり、この疑惑をめぐって主人公の内部的な物語が進行する。一方外的世界では藤原氏の摂関政治が随所でほころびはじめて武家が台頭するが、清盛父子などの「地下」の身分の者どもが軍事力を政治力に転化させながら権力闘争に乗り出していく辺りを溝口はそれなりにいきいきと描いている。

しかし気勢を挙げる比叡山の悪僧どもに単身飛び込み、神輿に弓を射て僧兵を退去させるなどの描写は講談的といわんよりは漫画的であり、観客の常識を逆なでする不自然な演出である。私には溝口のどこがどのように名監督なのかいまいち理解できないところがある。

うしみつどきに灯りをつけて働いているわが町内の二軒の家 蝶人

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