Thursday, August 18, 2011

マイケル・カーチス監督の「カサブランカ」を観て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.141

1942年製作のアメリカの、というよりは全連合国側共同製作の反ナチス宣伝映画です。基本的にはこの頃キャプラが作っていた打倒枢軸国の国策映画とおなじラインにのっかっているプロパガンダムービーですから、芸術文芸のレベルで厳しく評価するとかなりの駄作と言わねばなりませぬ。

その最大のハイライトが、ボギーの経営するバーで闘われる両陣営の歌合戦。かたや独軍が愛国歌「ラインの守り」を高唱するとこなた連合国側では「ラ・マルセイエーズ」で対抗する。ここは何回見ても涙が流れるのですが、まてよ俺はかつて彼らの敵国であった日本人である。それなのにどうしてフランスやアメリカを応援してしまっている。可笑しいではないかと自問するのですが、いつもそうなる。見事につくられた宣伝映画なのです。

本作はもちろんボガード、バーグマンという美男美女大物役者が特別出演している大恋愛映画でもあるのですが、最後はそんなもの吹っ飛んでしまいます。

我らがボギーは、恋人イルザをわがものにするか、それとも恋敵のレジスタンスの闘士に与えるかについて一晩考えた挙句に、「自分たち3人の運命よりも大事なのは反枢軸国戦争の勝利である」という見上げた結論!に達して後者の道を選び、自分自身もビシー水(政権)を捨てて警察署長ともども再びレジスタンスに参加します。

「恋より戦争」「私事より公事」「酒場のひねくれたオヤジより反ナチの闘士」という選択ですが、どうも割り切りが乱暴かつ早すぎるようで単純明快すぎて私にはあまり面白くない。あんないい女をあんなチエコ人に呉れてやるくらいなら、俺が引き受けて世界の果てまで逃亡しようぜ、という具合の展開にできたらして欲しかったと思うのですが「皆さんいかがでしょうか?」(これは今は亡き菅首相の真似)

この頃のバーグマンは若くてキラキラ輝いているが、その同じ人物が三六年後に「秋のソナタ」のような映画に出るのだから女は怖い、凄い。それが分かっていたらボギーも「君の瞳に乾杯」などという訳の分からぬセリフを何回も繰り返さなかったと思うのですが。

今日からは時給40円となったことも知らず君はいそいそと出勤する 蝶人

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